スマートフォンやクラウドなど、今や生活に欠かすことのできない通信ネットワーク。これらのデータ通信は、データセンターや通信基地局のネットワーク機器によって支えられていますが、その機器同士を高速で「つなぐ」のが、山一電機のコネクタです。
今回はコネクタの設計開発を担う、入社3年目CN第2技術部の池端さんに、高速データ通信を支えるコネクタ開発の裏側とその魅力についてお聞きしました。
通信ネットワークを支える、山一電機のコネクタ
――現在の仕事内容について教えてください
池端:ネットワーク機器向けコネクタの設計開発を担当しています。主にはデータセンターで使われるコネクタで、お客さまのご要望や仕様にあわせて、オーダーメイドで製品を開発しています。
―― 開発したコネクタはどこで使われていますか?
池端:日々の暮らしになくてはならないインターネットですが、その膨大なデータ通信を支えているのが、世界各地にある無数の基地局です。当社のコネクタは、通信をエリアごとに総括している通信基地局やその先にあるデータセンターとの間で、信号のインターフェイス(データやりとりの窓口)として活躍しています。
―― インターネットに欠かせない重要な基幹部品なのですね
池端:私たちが普段目にすることはありませんが、インターネットを利用する身近なモノやサービスにはすべてコネクタが関わっています。例えば、今話題の5G(第5世代移動通信システム)は、遅延のない高速通信が特徴ですが、その通信品質を支えているのがコネクタです。数千キロメートルの都市間を結ぶ「海底光ケーブル」も、信号の窓口として当社のコネクタが採用されています。
信号を歪みなくきれいに通す、コネクタの秘密
―― 山一電機のコネクタの特徴について教えてください
池端:コネクタはデータ通信の入り口となるため「信号をいかにきれいに通すか」が求められます。当社のコネクタは伝送特性(信号の通しやすさ)に優れ、歪みの少ないきれいな信号をネットワーク機器に伝えることができます。受信時のデータ飛びが減り、信号をより速く正確に伝えることができるのです。
―― 開発にあたりどのような工夫をされていますか?
池端:コネクタは「電気的」な要素だけでなく「機械的」な要素も併せ持っています。信号をきれいに通すためには「まっすぐ一直線」に機器をつなぐのが理想的ですが、コネクタにはかならず機械的な接触機構があり、そう簡単にはいきません。そこで当社では端子の形を最適化するとともに、1/100ミリの精度で製品をつくりこみ信頼性を担保しています。そのため何回抜き差しても、同じところで位置が決まり、高速信号を歪みなくきれいに通すことができるのです。
―― 電子部品の域を超えた、精密部品ですね
池端:はい。コネクタは樹脂部品の膨張・収縮などで寸法のズレが生じると、期待通りの性能がでません。そのため開発では実際の製品のばらつきを考慮して設計をしています。開発の仕事は「ばらつきにくくする」だけでなく「ばらついても精度がでるようにする」のが大事だと思っています。
最近では製品の信頼性を上げるため、シミュレーションにも力を入れて開発に取り組んでいます。「この形にすれば、信号はどれくらいきれいに通るか?」「コネクタの噛み合わせはどうか?」など、CADデータをもとにコネクタの特性や性能をシミュレーションで検証しています。データやノウハウの蓄積による試作のコストダウンも期待されています。
今の開発が未来のインターネットを支える、5Gの先を見据えて
―― 今後の開発目標について教えてください
池端:3G・4G・5Gと通信速度はますます高速化、それにともないコネクタの伝送技術も高度化しています。今、開発の現場では5Gの先を見据えて、100Gb(ギガビット)パーレーンの規格開発を進めています。1コネクタあたり800Gbもの大容量のデータを通すことができる先端技術です。コネクタの開発は当社だけでは実現できません。現行の製品開発と並行しながら、規格団体やネットワーク機器メーカーと一緒になって、次の規格に向けて新しいルールづくりを進めています。
―― コネクタ開発のなかで、楽しみにしていることは何ですか?
池端:コネクタの形は、芯数違いだけのものも多くどうしても似てしまいがち。ただそのなかでも「なぜその形になったのか?」を常に考え理解してから設計をしています。自分で考えてつくった設計が、期待通りの性能を出した時は嬉しいですね。
今開発している次世代のコネクタが世に出るのは、5年後、10年後のもう少し先の話。私自身まだ入社3年目でその瞬間にはまだ立ち会えていませんが、「あの時の製品が通信ネットワークを支えている!」と思う瞬間を楽しみにしています。
ネットワークの課題をテクノロジーで解決する、コネクタ開発の魅力とは
―― 池端さんからみた、コネクタ開発の魅力について教えてください
池端:クラウドやIoTなど「つながる社会」の到来で、高速通信のニーズもますます増えていくでしょう。今のデータ通信技術では、テラバイト単位の大容量データを東京から大阪に送ろうとすると、(通信条件にもよりますが)新幹線に乗ってハードーディスクを運んだ方が早いんです!そんな課題を新しい技術で解決していくのがこの仕事の魅力です。
今みなさんが意識することなく触れているテクノロジー、実はそれがあたりまえに動くのはすごいこと。そのあたりまえを縁の下で支えるのは決して華やかではありませんが、とてもクールな仕事です。少しでも多くの皆さんにコネクタの魅力が伝われば嬉しいです。
取材後記
池端さんは現在、海外支社を通じてアメリカをはじめ欧州や中国など海外メーカーとの製品開発にも携わっています。「装置の限られたスペースで、信号をきれいに通したい!」「芯数やサイズをカスタマイズしたい!」などさまざまな要望に応えながら、世界を相手にグローバルに活躍されています。
プロフィール
池端 祐太朗
CN第2技術部CN開発技術1課
※所属・内容などは取材当時のものです